ねえ、14年前の今日に、
もしも貴方が生まれていなかったら
あたしは今頃何をしていた?

8月19日午後23時59分。
あたしは携帯を持って、一馬の家の前の公園にスタンバっていた。
夜とはいえねっとりとした空気が流れて、すっきり爽やかとは言えない季節。
そんなことは、どうでもいいのだ。
あと一分で、この世で一番愛しい人の生まれた日がやってくるのだから。
あたしの目は手元の携帯電話の時計をじっと見つめる。
秒針がついていないのでいつ変わるか分からない文字を、瞬きも忘れて見つめる。
23:59の表示が一瞬消えて光って、
00:00に変わった瞬間、
準備していた通話ボタンをピッと押した。
テュルルルルル……
聞きたいのはこんな機械音じゃなくて。
『…もしもし、?』
「一馬!」
こんな機械ごしの声でもなくて。
「今すぐ窓を開けてください、真田さん」
『は…?』
「いいからー」
ガラッと、2階の一馬の部屋の窓が開いて、その大好きな顔が覗く。
携帯を片手に持ったまま、怪訝そうな顔をした一馬に、
どうしようもなくあたしを落としてくれた貴方に、
精一杯の愛の唄を。
『「一馬ーー!誕生日おめでとーー!!!」』
叫ぶと、一馬の携帯からも自分の声が流れ出てきて、
その一瞬に一馬が吃驚した表情を隠さずにこっちを振り向いた。
『「!?」』
同じようにアナログとデジタル両方の一馬の声が聞こえ、
それだけであたしはこの世界で一番幸せものになれる。
『「ちょっと待ってろよ、今降りるから!」』
そう声が聞こえて、窓が音を立てて閉じられて、
一馬の顔がふっと消えたかと思うと、
直ぐに玄関からジャージ姿のまま飛び出してきた。
さすが、足が速い。
生まれた日に一番に、一馬があたしの為に走ってくれたんだと思ったら、
嬉しくて思わず顔がニヤけてしまう。
「…どうしたんだよ、こんな夜中に」
「一馬の誕生日、一番に祝いたかったんだ」
複雑な表情を浮べつつも、ちゃんと喜んでくれていることが感じ取れるから、
あたしも心底から笑みが浮かべられる。
「暗いのに…危ないだろ?」
「一馬の為なら、襲われたって平気ー」
「…それは俺が嫌」
ぷい、とそんな言葉を言ったあと、
頭に手をやりながら照れ笑いして。
「…サンキュ」
あなたはどうしてこんなにも
あたしに好きという気持ちをくれるんでしょうか?
「ねえ、一馬」
「ん?」
「生まれてきてくれて、本当にありがとう」
「…っ!」
ねえ、14年前の今日に、
もしも貴方が生まれていなかったら
あたしは今頃何をしていた?
きっと貴方を探したまま
闇に彷徨っていた。
あたしは、一馬じゃないと駄目なの。
「…ダイスキ」
真夏の暑い夜なことはとっくに忘れて、
生温かい風に乗って一馬に抱きついた。
人の体温はきついものがあるこの気温の中、
それも気にしずに一馬があたしの背中に腕を回す。
「…なんで泣くんだよ」
「…泣いてない…」
「………ふーん」
「…一馬がちょうど14年前にこの世に来てくれたことが、嬉しいから」
「…………ふーん…」
「照れたでしょ」
「照れてねー!」
ヘタレのくせに男前、
意地張りなくせに優しくて繊細。
いいところも悪いところもひっくるめて、
こんなに人を好きになるだなんて、ね。
…ちゅ、
「…!?」
「一馬の14歳のファーストキス、もらっちゃった」
「………焦んなくても、100歳までにあげるから」
「!」
あたしたちを照らすのは、
小さく光る電球と、月の明かりだけ。
それだけで、十分。
「送ってくよ」
「ん、ありがと」
あたしたちを繋ぐのは、
芽生えた恋心と想う気持ちだけ。
ただ、それだけ。
それだけで、十分。
Happy birthday my lover,Kazuma.
今日という日があって、本当に良かった。

ま、間に合った…!
といいつつこんなものしか書きあがりませんでしたけど…
名前変換凄く少ない気がorz
とにかく誕生日おめでとう一馬!
い、一応DLF夢に…(誰もいらない
逃げます。
(c)愛渚 雛古 2005.08.20