「シーゲーちゃん」
「………」
「ちゅーしよー!!」

「あたし、お酒入るとキス魔になるのよね」
始まりは、のその一言だった。
桜上水サッカー部が、一瞬のうちに固まる。
浮いていたボールだけが重力に逆らえず、ポンっと土の上を滑った。
「な…何よみんな」
何せマネージャーは、小島をしのぐほどの美人。
転校してきてすぐ、サッカー部のヒロインになったのだ。
…本人は気付いていないが。
サッカー馬鹿だった水野や、風祭さえも固めてしまう威力。
…ちなみに、不破は家庭の事情何とかで休みだったのだが。
とにかく、それほどまでの言葉だった、それは。
キ ス 魔 に な る の よ ね
健康中学生男子一同、単純思考回路。
この場に居た男子は、全員そう思ったに違いない。
に酒を飲ませようではないか!
「…、今日明日あたり、気をつけなさい」
「有希?」
「…飲まされるわよ、絶対」
「だからキス魔になっちゃうって言ってるじゃん。わざわざ飲ませる人なんて居ないよ」
「(キス魔になるから危ないのよ!)」
「早く練習しなよー、みんな何やってんの?」
「お、おう…」
のその言葉で、とりあえず場内は金縛りから解かれた。
放課後。
「ー、ちょっと河川敷よってかへんか?」
「シゲちゃん。どうして?」
「ん?何かみんなで騒いでくらしいで」
気 を つ け な さ い 。
有希のその言葉が、頭を巡る。
…大丈夫だよね、みんな居るし。
第一、そんな事ありえないもん。行こっと。
「うん、行く行くー」
「(よっしゃ!)ほな、行こか」
「いっつも将が練習してる所?」
「そうやで」
シゲと二人で、河川敷に向かった。
…これからなにが起こるかも、全く知らないで。
「遅かったじゃないですか、さん、シゲさん」
「ごめんねー」
「じゃあ一杯、乾杯といくかー」
高井の言葉で、みんなが紙コップを手にする。
「ん、(バ、バレてないよな)」
「ありがと、水野。これ何?」
「え、あ、あの…」
「桃の天然水ソーダや。誰かさんの趣味でな」
「ふーん」
本当は、桃のチューハイだそうです。
「みんな行き渡ったかー?じゃあ、乾杯」
「「「乾杯ー」」」
真中にお菓子やおでんが並べられ、円になった上水サッカー部。
…さあ、小島が居ないのはどうしてでしょう。
みんなが今か今かと見つめる中、は紙コップを手前で止め、ふと首をかしげた。
一同、ドキッ
「ねえ、これって何のお祝いなの?」
「(…ほっ)え?ああ、外山君の誕生日パーティーですよ」
「へー、おめでとう、外山」
「あ、ありがとう」
「(メインはのキス魔姿やけどな)」
「、乾杯の後は一気飲みが礼儀やで。早よ飲まんかい」
「え?あ、うん」
ゴクゴクゴクゴク…
ドキドキドキドキ…
「な、何か顔がぽかぽかするんだけど…」
「「「………」」」
「ね、もしかしてこれお酒…」
くらっ
そこで、冒頭に戻った。
「シーゲーちゃん!ちゅーしよー!」
「うわ、ほんまやったんやな」
「えー?何がー?ちゅーしよってばー」
「「「(何でシゲなんだよ…!)」」」
シゲ以外、唖然。
「わ、ちょ…待ちぃや、…!」
「ねーねー、ちゅー」
「(後ろからの視線が痛いねん…!)……」
「ねー、シゲちゃんってばー」
とんっ
が、シゲの上に被さった。
「「「(見てられねぇよちくしょう…)」」」
ぶちゅっ
「…上手いやん」
「ほんとー?わぁい、褒められちゃったー」
「今度は俺からしたるさかい」
「うんー」
ぎゅっ
「………は………」
「「「(いじめだ…)」」」
上水一同、後ろ向き。
「そ、そろそろ帰らないと」
水野が立ち上がり、みんなはっと我に返った。
「そうだな、俺も(つまんねーよ…)」
「僕も帰ります!(何でシゲさんだけ…)」
日も落ち、春とはいえ大分寒さがやってきた。
みんなが、後片付けを始めたころ。
「ちょ、な、なんでシゲが…!」
「が誘ってきたんやーん」
大きな声がして、の酔いが冷めたことを知る。
「お酒…飲ましたわね」
「えー?聞こえへんー」
「シゲの馬鹿ー!」
名前も呼んでもらえない一同は、とっとと家に帰りましたとさ。
「なあなあ、何で俺やったん?」
「し、知らない!偶然よ」
「だって向かいにおったんにわざわざー」
「…………勝手に想像すればっ」
「ほんまかい、俺も好きやねんで」
「…そんな事、言ってない!」
「またまたー」
桜上水サッカー部名物の、バカップルが誕生した日でした。

3000HITキリリク、シゲ夢の微糖+ギャグです。
逆ハー気味ですが、お許しを…
不破君の家庭事情、実は後から付け足した言葉だったり…あはは(笑うな)
切実に、文章力がほしいと思いました、はい。
3000HIT、ありがとうございます!
日々精進を目指して、これからも頑張っていきます故。
桜綺様のみ、煮るなり焼くなりお好きにしてください。
リクエスト、ありがとうございました!
(c)愛渚 雛古 2004.04.04