君が祝ってくれてこそ
この一日がトクベツになる。

「きゃー!!翼くーん!!」
今日という日の朝、校門をくぐった僕の周りを遮った女特有の黄色い声。
予想通りというか、予想以上というか…
女って生き物の気力には、呆れを超えて感心する。
「これ受け取ってー!!」
色とりどりの、ラッピングを抱えて我先にと近寄ってくる。
むわむわと土ぼこりが経って、本当に人の事なんて考えてないんだな、と溜息。
「邪魔なんだけど。どいてくれない?」
「貰ってくれたらどくからっ!!」
いつもなら、その一言でささっと花道が出来るものだけど、
今日という今日は諦めないらしい。退く気配すら見られない。
ああ、一人で登校なんてするんじゃなかった…
直樹か誰かが居れば、盾になってもらったのに。
ピン、と一粒のアイディアが浮んで、
きーきー煩い、香水臭いその中で声を張り上げた。
「僕、大人しい子が好みなんだよね」
ピタッ
それが漫画だったら、そんな効果音がバックに書かれていただろう。
面白いくらいに一時停止した後、全員が揃って退き、
無言でリボンの包みを差し出した。
大体、この人数を考えたらどう?
一人一人のプレゼントなんて受け取れるわけないだろ。
それとも、自分だけは特別だとでも思ってるんだろうか?
「じゃあね、気持ちだけもらっておくから」
「あ、つば…」
「何?」
にっこり笑って見せると、また黙り込んでしまった。
気分爽快。僕もつくづく人が悪いよね。
「あとね、後ろに溜まってる人達の迷惑も考えてみたら?」
それだけ残して、人だかりを一人で抜けていった。
あんな風に気持ちを押し付けて、何が楽しいんだろうな。
朝の風が吹き抜ける屋上で、そんな事を考えていた。
おめでとう、なんて一言も言わないで。
あれじゃ物で人を釣ってるようなものだって、気付かないの?
去年の学校でだって、そうだった。
心から僕を祝ってくれる人なんて、一人も…いや、一人だけ居たっけ。
そうだ、だから彼女に惹かれたんだった。
マイペースで、それでいてしっかりもので、随分大人っぽいオーラを放っていて。
『おめでとう、翼くん』
一年前のあの日、そう言ってにっこり笑った彼女に、どうしようもなく想いが向かっていった。
肝心なところだけ素直じゃない僕は、その気持ちを引きずったままここへきてしまったけど。
もう一度、あの透き通った声が聞きたい。
そう思いつつ、会いにいけない距離でもないのにこの地から動けなかった。
もちろん、サッカーで忙しかったって事もあるけど…
きっと、怖いんだ。
会ってしまったら、大きすぎる気持ちが零れて、壊れてしまいそうで。
心無しに咽喉の奥がつーんとしてきて、涙が出そうになったその時。
ガタッと音がして、はしごから誰かが降りてきた。
「誕生日おめでと、翼」
「柾輝。居たの?」
「結構前からだけど」
「そう。ありがとう」
「やけに素直だな」
「別に普通だけど?」
憎まれ口を口から吐き出しながらも、温かい心地よさが嬉しかった。
似ている、彼女の傍で流れていた空気に。
外見は、似ても似つかないけど…柾輝のかもし出す空気は、どこか懐かしかった。
「誕生日なのに、湿っぽくなってんなよ」
「何の話?」
そう、こんな。
心の奥に潜んだ優しさ、心配りが。
似ている。
という女に。
「たまには、素直になってもいいんじゃねぇの」
「だから何の…」
「誕生日くらい。生まれてきたままの感情で居れば?」
「………ありがとう」
ほんの少し、ほんの少しだけ、
光るフェンスの向こう側に涙を落とした。
会いたい。
会って、今度こそ。
好きだって、愛してるって。
それだけを、伝えたい。
ピルルルルルルルルルルル…
「翼、携帯」
突然、ズボンのポケットに入っていた携帯が振動とメロディーを飛ばした。
画面の番号は、『00000000000』
見たことがない、数字の行列だった。
ワン切り詐欺?いや、それにしては鳴りすぎている。
間違い電話だろうか。とりあえず、通話ボタンを押してみる。
「もしもし…」
『あ…翼くん?』
「え…………、…?」
懐かしい、それでもイヤほど覚えている声が機械から響いてきた。
横では柾輝が、状況を察したのか満足そうに少しだけ笑った。
『おめでとう、翼くん』
どんなにか願ったその言葉の調べが、今自分の耳に届いている。
ただ混乱していて、いつもなら素早い脳が正常に動いてくれなかった。
「何、で…」
『どうしても、これだけ言いたくて。ほら、翼くんと仲良かった君に教えてもらって…』
「………」
『どうして、一回も会いにきてくれなかったの?寂しかったよ』
「……忙しかった、から」
『そっか…そうだ、見たよ。大会惜しかったね』
「うん…」
自分らしくもなく、涙がこぼれそうで。
『とにかく、おめでとうね、翼くん』
「……ありが、と」
『え?』
「ありがとう」
『ふふ…どういたしまして』
この日があって、良かった。
僕が生を受けたこの日があって、本当に。
服をぴんっと引っ張られる感触がして、下を見ると
いつのまにかしゃがんでいた柾輝が、ティッシュを差し出していた。
顔を見合わせると、口だけ動かして、柾輝は。
は な ふ け よ
馬鹿なその気遣いに、噴出しそうになった。
ば ー か
そうとだけ、口を動かして。
「、今日、会いにいくよ」
『え、今日?』
「うん、終わったらそっちの学校行くから。祝ってくれるんだろ?」
『ほんと?もちろん。プレゼントも、買ったんだから』
「え、うそ」
『ほんとだよ、…あのね、翼くん、あたし…』
その続きが、僕の願いに繋がる事を、祈って。
「あ、ごめん、友達に呼ばれた。後で、聞くよ」
『え?あ、うんまたあとでね』
ピッ、
最後だけ嘘をついて、電話を切った。
「…〜っ……」
「翼、顔赤い」
「…うるさい」
少しからかったように笑う柾輝を、優しく睨んで。
早く放課後にならないか、なんてせっかち屋になっていた。
「翼くーん、お願い、これ受け取ってー!!」
昼休み、懲りずに追いかけてくる女達に。
「ごめん、僕ホントは彼女居るから」
ちょっとだけ未来の、本当の話。

遅くなってしまいました…!いや、でもちゃんと19日。
とにかく、翼さんおめでとうございます!
そして意味のないDLF夢(ダウンロードフリー夢)になっております。
著作権破棄はしませんけど、どなたでもお持ち帰りどうぞ(いらない)
もし持ち帰ってくださる方がみえましたら、報告していただけると飛び跳ねます。
そうそう、お友達が男になっててごめんなさい(汗)
だって、前の学校の人なんて知らないんですも…!
ではでは、ホントにこんぐらちゅれーしょん♪
(c)愛渚 雛古 2005.04.19