唐突に巻き込まれてしまった、プログラム…別名、バトルロワイアル。
私のバッグから出てきた武器は…拳銃、でした。
それもたった一弾だけの。

気が付いたら、既に錆びた凶器を持って、そこに居た。
記憶があるのは、この武器を構えた所まで。
私…誰かを殺したのかしら。
「水…野…?」
ふと右下を見下ろすと、其処には。
紅く染まった、水野竜也が居た。
世界で一番、愛しい貴方の屍。
「水野…水野っ!!嘘…目…開けてよ水野っ…!」
肩を抱え、必死に名前を呼び、揺さぶった。
答えてくれる声も、力もなくて。
ただ私の腕にかかる貴方の体重。
夢…夢、これは悪い夢だわ…
あんなに頼もしく見えた貴方の広かった背中が、
男の子だなって、頬をピンク色にした大きな肩幅が、
今は、とてつもなく乏しく見える。
「…これ…」
貴方の胸に貫通していた、一弾の弾を見つけた。
たった、一弾。
恐る恐るバッグの中から出した拳銃に詰めた、銃弾。
怖い程、見覚えがある弾。
「…嘘………」
知らないうちに、意識の無いうちに。
私は、世界中で一番愛していた人を殺めてしまったらしい。
スカッと情けない音を立てる青い武器が、その罪を痛いくらいに示していた。
「水野…水野…うそ…」
狂って、しまったらしい。
どうしようもないくらいの、狂人と化した私。
泪さえ、もう止まってしまっていた。
『…好き、だ』
『世界中で、一番』
孤島の民家に登る鳩が、1羽2羽。
水野がくれた、甘美な言葉を、
汚して、いった。食べていった。
私自身が。
どうしようもなく、おかしかった。
「ふふ…あはは、…あはははは」
狂 ッ テ 、 シ マ ッ タ ン ダ 。
いくら呼んだって、返ってこないの。
戻ってこないの。
貴方が居ない世界なんて、
何も無いのと一緒だわ。
これ以上、狂ってしまう前に。
いつだったか、貴方と遊園地に行った。
ジェットコースターは、怖がって乗ってくれなかったっけ。
真っ赤になる貴方を見て、笑ってはしゃいだわ。
いつだったか、貴方と授業を抜け出した。
駄目だって母親みたいに言う貴方を何とか連れ出して。
屋上でみた、暖かい光と眼差しは、一生忘れられないと思った。
いつだったか、貴方とケーキ屋さんに行った。
必ずレアチーズケーキを頼んでた貴方に、
どうしようもなく愛しさを覚えたの。
いつだったか、貴方のサッカーの試合を見に行った。
見せ付けてくれるように巧みな技を披露してくれて。
帰り道に、ファーストキスを預けたんだった。
想い出、なんて。
楽しかった事しか思い出せない。
いつのまにか、途切れていた泪が流れて。
馬鹿馬鹿しさに、あきれ返った。
もう、心の中でしか繋がっていられない。
そっと、そっと。
貴方を抱きしめた。
生暖かい感触に、怯みながらも尚。
愛しすぎたの。
もう、殺したくなるくらいに。
パンッ
心地よい銃声が耳元をかする。
振り向いたその瞬間に、
水野から手が離れて、
押し倒される形が創られていた。
「シゲ…ちゃん?」
「、久しぶりやな」
「ちょ…何し…」
「動かんといてな」
プツンっと、ボタンが取れはだけた胸に、
ジュッと鈍い音と感覚が走って。
「…っ」
さっき弾を放ったばかりの余熱に、焦がされた。
「…ずっと、ずっと好きやった」
「シゲ…ちゃ…あ…やだ…」
「最期になるさかい、冥土の土産や」
犯されていく、頭の片隅に残るのは。
蛍火のような明るい光がふりしきる水野との想い出だった。
水野……ごめん……ね。
好きじゃない、男の人に抱かれて。
不本意に、犯されていって。
それでも、貴方の記憶しか、
追いかけていられない。
もうすぐ、後を追うから。
待ってて、水野。
「シゲちゃん…殺して、くれるんでしょ?」
「が、望むんならな」
「もちろん」
ニッと前からお得意の笑みを浮かべてみせる。
全裸で、生まれたままの姿で。
これで死ねるのなら、本望よ。
「…いくで」
カチャ、
銃が、目の前に掲げられた。
本能で、思わず後ざすりしてしまいそうになる。
「…ちょっと、待って」
「なんや」
水野を、隣に寄せて。
もう冷たいその手に、指をからませた。
何度、こうやって並んで通学路を帰ったっけ?
「タツボンは…幸せものやな。そないに想われて」
「ふふ…」
哀しそうに笑うシゲに、見せつけるように笑ってみせる。
本当は、そんなものじゃない。
狂ってしまった私からの、せめてもの恩返しよ。
「ほな、いくで…」
「うん」
もう、後ろは向かない。
パーン
生きる為の羽根は、舞い上がって、燃え尽きた。
土へ、空へ、自然へと返る。
パーン
もうろうとする意識のなかで、金髪の頭を打ち抜く音が聞こえた。
微かに…確かに、聞こえた。
「タツボン……お幸せにな」
そういう、シゲちゃんと。
「当たり前だ、な」
そういう、水野と。
「ありがとう…皆、みんな」
そういう、私自身。
全てが、燃え尽きて。
何もかも灰になって、それさえも燃えた。
さあ、どこへ行こう?

COCCOちゃんの「羽根」の曲ドリ…のつもり。
お風呂の中で唄っていて、バト笛書けそう…って。
何気にみずのんの初ドリだったりもします。
(いや、むしろ水野+シゲかな…)
みずのん出てこないけどね。
ありがとうございました(逃)
(c)愛渚 雛古 2004.04.11