6月3日、23時45分。



もしかしてあたし、



人生で最悪の誕生日を迎えようとしてるのかもしれない。



















『ああー、もう…雨嫌だー』


元は、と言ってしまえば、6月の雨のせいに出来るのかもしれない。

既に二人ともじとじとする雨空のせいで、イライラしてはいたのだ。


あれは3日前の日曜日。

この天気のお陰で楽しみにしていた遊園地デートがキャンセルとなった日だった。


『るせーな、さっきから…』

『だって嫌じゃない、雨』

『俺だってそうだけどよ…』

『だけど、何よ』

『嫌なことはもう分かったから、違う話題ねーの?』


たしかに、ぶっきらぼうな言い方だった。

だけどそれは三上の元の性格やイライラしていたせいでもあって


決してあたしに対する文句でも何でも無かったはず。


『何で?元はといえば三上がパソコンなんかやってるからじゃない!』


本当に、どうしてあんなにカリカリしていたのか自分でも分からない。

ただ、その言葉が三上の気に障ったのは確かだけど。


『ああもう、だったらあっち行ってろよ』


こっちも見ずにそんな風に言われてしまったらあたしは、


『分かった…もう、三上なんか知らない!ばーか!』


それだけ言って、部屋に戻ってきてしまったのだ。

もちろん、部屋のベッドの上で大後悔したことは言うまでも無い。






あたしたちは、元々2人も意地っ張りだ。


これまで1年半も続いているけれど、(それが不思議なくらい)

何回も喧嘩をした。


どの喧嘩も、1週間以上は口を聞かないのだ。

そしてどっちかが謝って自然と元に戻っている。


あの喧嘩から3日間。

それだけで意地っ張りが緩まるわけがない。


年に一度の誕生日なのに。


三上、ごめんなさい…






「そんなに後悔してるんなら謝りにいけばいいのにね」



「本当、意地っ張りですよね、先輩も三上先輩も」

「誠二」

「ごめんなさい、って言うだけなのに」

「タク」

「三上、部屋で不貞腐れてたぞ」

「かっちゃん」


いつの間にか、ひとりだったはずの部屋に皆が集まってきていた。


「何しに来たの?ひやかし?」

「違うわよ、誕生日パーティに決まってるじゃない」

「俺のおすすめのお菓子いーっぱい買ってきましたから!」

「とかいって、自分が食べたいだけだけどね、誠二は」


わいわいと、テーブルの上にスナック菓子とジュースが並べられる。

そういえば、毎回こんな風に誰かの誕生日を祝ったっけ。


「ほらほら、先輩、そんなボーッとしてないで…」

「カウントダウンしよーよー」

「あと…10分ですね」

「ほら、の分」


あたしは、贅沢なんだろうか。

こんなにも良い友達を持って、誕生日パーティ。

これだけで充分、なのに


何かが、足りなくて、


その何かがあたしの心を占めていた。


「…ちょっと、トイレ」

?」

「ごめんね、すぐ戻ってくるから!」





この喧嘩は、誰のせいだった?

雨のせいでも、三上のせいでも、あたしのせいでも無かった。






「…行っちゃいましたね」

「賭けは俺の勝ちだな」

「あたしもだってば!」

「ちえー…俺は先輩の意地に賭けたのに」

「その前にシアワセを祈っとくべきだったんじゃない?」


ちゃんと、友人達はお見通しでした。





『トイレ』の前に来た。

プレートには、『三上・渋沢』

時計は午後23時55分。



「……はあ」


ドアノブに手をかけかけて、引っ込める。

そんな行動をもう10回は続けていた。


ここまで、来てみたはいいけれど。

やっぱり素直になって三上に飛び込むなんて、

あたしには到底出来ない芸なのかもしれない。


時計は、午後23時58分54秒


あと1分もしたら、あたしは三上よりひとつ年上になる。


今のうちに、出来ることはない?


時計は、午後23時59分13秒



プルルルルルルルル…



「えっ?は、はい」

『もしもし、?』


………


?」

『随分長いんじゃない?ト・イ・レ』

「え、ご、ごめ…」

『いいけど、待たせた分だけ素直になりなさいよ』

「…は?」


先輩、あと15秒ですよ!早く切らなくちゃ!


そんな藤代の声をバックに、電話は途切れた。


時計は、午後23時59分48秒



「……何やってんだよ、そんなとこで」



その声は、待っていたものと同じだったから、

酷くびっくりしてドアノブにひじをぶつけてしまった。


「…〜った…!」

「…ホントに何やってんだお前」


眼の前には三上が居て、

いつものような呆れた表情を浮かべてくれている。


時計は、午後23時59分59秒





ふっと三上が上を指差して

ふっとあたしはその指を追って

ドアの上に小さくぶら下がった包みを見つけて

それを取ろうとして

動けないことに気付いて

抱きすくめられたことに気付いた



「誕生日、おめでとう。



一輪の薔薇の花が握らせられて、

あたしじゃ到底届かなかった高さの包みを取って、

それをポン、と頭の上に乗せて

三上はあたしが握れなかったドアノブを掴んで

部屋の中に入っていった。


包みの中身を見て、

喧嘩の事は都合よく忘れて、

あたしも部屋の中に入っていった。



「………キザ」

「あれ、俺に怒ってたんじゃなかった?ちゃん」

「忘れた」



薔薇の匂いに包まれながら

指元に光を煌かせながら

お互いに感情を全てのせて


15歳はじめてのキスをした。



これからも喧嘩して

これからも仲直りして

これからも友達に迷惑かけて

これからも愛し合って


あなたが ずっと

大好き


最高の花束を

ありがとう 三上



あなたがくれた指輪の裏側

I l o v e f o r e v e r y o u .



M e , t o o .














水萩様、お誕生日おめでとうございます!!

こんなものしか上げられなくてすみません…
心から、あなたの生まれた日をお祝いいたします。

微糖、とのリクエストだったんですけれど
自分的に甘くなりすぎかな、と…
だ、大丈夫でしょうか?;

水萩様のみ、お持ち帰り可です。

では、本当におめでとうございます!

(c)愛渚 雛古 2005.06.04