『ねえ、さすがにあんたでもどうやったら子供が出来るかくらい知ってるよね?』
『知ってるよ、キスするんだよね』
『…それ、本気で言ってんの?』

「ねぇ一馬、どうやったら子供出来るか知ってる?」
それは、東京選抜練習日の昼休み。
マネージャーがいきなりそんなことを言い出し、
一馬は飲んでいたりんごジュースを吹き出しそうになった。
結人はたこウィンナーがついたフォークを持ったままケタケタ笑いだし、
英士は聞いてなかったのかそのフリなのか、知らんぷりして黙々とキムチを食べている。
手に持っているリンゴの絵のパックよりも赤くなりながら、一馬が言った。
「ど、どうして…」
「いいから答えてよー。に馬鹿にされたんだもん。キスしたら出来るんじゃないの?」
「え、それまじで言ってんの!?」
「うわあ、結人にまで馬鹿にされたー」
「いや、してねぇけど…俺小5ん時にはもう知ってたよ?」
「俺は小2」
「お、俺は中1だったけど…」
「ねえだから何の話ー?」
どうやらお姫さまは本気でS●Xという単語を知らないらしい。
まだ中2、されど中2…
こんな純情な女の子がいたら、男の本能なんてものがウズくもんだ。
「じゃあ、俺が教えてあげようか?」
ニヤリと笑ってそんな言葉を紡ぐのは、他の誰でもない郭英士。
冗談なのか本気なのか…
英士が言うと、なぜか冗談に聞こえないのだけど。
「うん、教えてー」
なにも分かってないは、呑気にそんな事を言う。
「や、待てよ英士…仮にも友達の彼女じゃんよ」
止めたのは結人。
そう、マネージャーはつい最近、真田と付き合い始めていたのだ。
だから冒頭で出てきた台詞が一馬宛てだったりしたのだが…まあ今はどうでもいい。
「…ちっ…何言ってるの結人。冗談に決まってるでしょ」
「(今絶対舌打ちした…!)そ、そうだよな英士」
「ここは彼氏として一馬が教えてあげるべきでしょ?」
「そうだよ、も作るなら一馬との子供だよな」
「うんー」
…何だか会話は凄いことになってきているのですが。
盛り上がる3人に対してヘタレる男の子一人。
「どどど…どうやって?」
「ぎゃはは、かじゅま顔真っ赤ー」
「かじゅま言うなって!」
「やっぱ実践しかないんじゃない?は言葉で説明しても分からなさそうでしょ」
「じ、実践って…!」
今にも破裂しそうなくらいな顔をもっと赤くして一馬がもごもごとしゃべる。
一体ヘタレの顔とはどこまで赤くなるのであろうか。
焦るりんごに対して、まだ呑気な女の子一人。
「うん一馬、教えてよー」
「ていうか、と一馬ってキスくらいした事あるわけ?」
これは結人の台詞。
「キス?ない、けど…」
「…っ!」
「だっせー一馬、キスもしてないのかよ」
「ヘタレでしょ」
「…〜っ…」
あーあー、更に更に赤くした顔で、一馬君は今にも爆発しそうです。
「うるせー!キ、キスくらい…俺はが嫌がるかなって思って…!」
「あたしは別に一馬ならいいよ?」
「……っ!」
「うっわ、一馬熟したトマトみてぇ…まずそ」
本当に、ここまでヘタレているとある意味大物である。
そんな一馬を自分の嫌いなものに例えてしまう結人も結人だが。
「だったらここでキスしてみれば?」
…前言撤回、やっぱり一番の大物は英士様だろう。
「え、い、今!?ここで?」
「そう」
きょとんとして一馬を見つめるに、ただたじろぐ一馬。
いつのまにかギャラリーが増えていて、選抜の面々がニヤニヤ笑いで集まっていた。
「で、でもが…」
「あたしは、いいよ?」
「………」
「一馬の負けだなー」
「もうするしかないでしょ」
「ま、まじで…?」
どうして、こんなことに…
そう思いつつもなんとか覚悟をきめ、の肩に手を置いた。
おおーとざわめく野次馬を必死で無視して、顔を近付けていく。
はというともうすでに長いまつげの目を閉じていた。
「(か、可愛い…)」
そう思ったのは、決して一馬だけじゃないはず。
綺麗に整ってでもどこか幼さが残る顔に乗っかった柔らかそうなピンクの唇に
もうすぐ自分のそれが重なると思うと、おかしくなりそうだった。
必死で理性を保ちながら、顔を近付ける。
あと10センチ…5センチ…3センチ…
「はい、練習始めるわよー」
唐突に監督の声が響き、はっと我に返る。
あたりを見渡すと、みんなががっかりしたような表情を浮かべていた。
「玲、邪魔しないでよね。今いいところだったんだから」
選抜のもうひとりのお姫さまが監督にたてつく。
何をやってたの?という西園寺に、椎名が真田とのキス観覧、なんてサラッと口にしたら、
監督は意味ありげにニコッと笑った。
「だったら、終るまで待ちましょうか」
みんながやった、なんて騒ぎ出す中、
真田はまた元の真っ赤な顔で固まっている。
「(ま、まじで…?)」
ちらっと、の様子を伺った瞬間。
ちゅっ
そんな可愛らしいおとが聞こえて、後から唇に柔らかい感触までふってきた。
一瞬なにが起きたか理解できずに呆然とする真田の回りが、わあっと沸き上がった。
「え…え!?」
「へへへ…」
はにかんだ笑顔を見せるを見て、ようやく事の起こりを理解した。
と、それと同時にボォッと顔が燃えるように熱くなるのを感じる。
「あーあ、キスくらいでそんなに赤くなって…そんな事で子供のつくりかたなんて教えてあげられないでしょ」
「な…英士…」
いつのまにか隣にいた英士に声をかけられ、はっとする。
メンバーたちは午後の練習に向けてストレッチを始めていた。
『なんか悔しいなー』なんて呟きながら。
「今夜」
「は?」
「今夜、一馬の家族いないでしょ」
英士に言われて、はじめて思い出した。
そういえば、旅行券が当たったとかなんとかで…
最高のタイミングとも、最悪のタイミングとも言い難かった。
「がんばってね」
「…〜っ…英士…」
どうするつもりなのか、助けを求めるように英士の名前を呼ぶ、が。
「英士君、一馬、早くストレッチしてねー」
の甘ったるいくらいの女声に掻き消された。
「ど、どうしよう…」
一馬が、そう言っている間にも。
「、今夜暇?暇でしょ?」
英士様は事をすすめておられました。
「え?あ、うん。あたし一人暮らしだからねーいつでも暇だけど」
「え!?」
はじめて出てきた新事実に驚きながらも、
今日という日はまだまだ長引きそうです。

はい、ひさびさにリクもお題もなしの短編書きました…!
ホントに久しぶりだな。
本当は結人にしようかと思ってたんですけど、
一馬のほうが楽しそうだったので一馬にしてみました。
見てわかるように、続き裏で書くつもりです。
ヘタレ一馬と純情ヒロインちゃんの初エッチv
っていうかヒロインちゃんが何をするか知らないってとこが非常においしい(…)
では、ありがとございました!(逃)
(c)愛渚 雛古 2005.05.04