ねえ、柾輝。

あたしたちが初めて会った日の事、覚えてる?













柾輝にはじめて会ったのは、2年の新学期、

クラス変えで隣の席になった、そんなときだった。


『よろしくね、あたし、

『…黒川柾輝』

『何か名前の通りな感じだねー』


…黒いねって言いたかっただけなんだけど。


『…ヘンな奴』

『え?何でよ』

『普通俺ら見て話し掛けようなんて思うか?』


確かに、そう言われてみれば、ガラ悪そうかも。

隣に居る…畑君だっけ?…も、見るからに不良ってますって感じ。


…でもさ。


『別に、見た目なんて関係ないじゃん』


思った事を言っただけなのに。

一瞬きょとんとした柾輝たちは、くくくっと笑って、

ホントに変な奴、って言葉を残して何処かに行ってしまったんだ。


まあ、サボりですね、要するに。



その後も、普通に仲良くなって。

翼先輩や直樹先輩、畑先輩とも仲良くなって。

よく6人でつるんで色んな所に遊びに行った。


お陰で、もともと好きだったフットサルも上手くなったし。





柾輝を初めて男の子だって意識したのは、2年生の冬。

選抜とかにまで選ばれて、どんどんサッカー進出をしていってた時だった。


なりゆきで部活のマネをやってた私も、時々練習を見に行ったりして。

選抜のマネージャーだったちゃんとも、仲良くなった。


『おいコラてめぇ、ドコ見て歩いてんだよ、あぁ!?』


柾輝と六君と3人で、選抜の練習に行く途中だった。

…あ、ちなみに翼先輩は、西園寺監督とバイクで行くらしくて。


そんな時に、私が、いかにもガラの悪そうな人にぶつかってしまったのだ。

重いスポーツバッグが当たって、痛かったようで。

すごい剣幕で怒鳴られてしまった。


『ご、ごめんなさい…』

『ごめんで済んだら、警察はいらねんだよ!』

『ホント、ごめんなさい…私が悪かったです…』

『あ?…よく見たら、お前結構可愛いじゃんかよ。っし、1回ヤらしてくれたら許してやるよ』


何だか口調は柔らかくなって、ひとさし指を立てた。


それが何を差すかくらいは、分かって。

経験の無い事だったから、それだけは嫌だった…


『や…』

『あぁ?』

『それは…いや…』

『お前な…』

『な、おっさん。そんくらいにしとけよ』


掴まれそうになったその手を、柾輝が止めていた。


『てめ…』

『それ以上言うんならこっちも我慢しねぇけど』

『上等じゃねーか、くぉら』


二人首元を掴み合ったその時、


『君たち、喧嘩かね』


警察官のおじさんがたまたま通りかかって。


『…ちっ』

『おい、、逃げんぞ』

『う、うん』


さりげなく手をひっぱられて走った。

あたしの顔は真っ赤だっただろうか。

繋がれた手の温度は今だって忘れてないよ。







柾輝の事が、好きになってた。






ねえ、そんな大切な事。





今になって、気付くだなんて。






キキーーーーーーーーーーーーーーッ!!!











『柾輝!!!』












翼先輩の声が、エンジンの音でうるさい道路に、響いた。





何事かと、振り向いて。





柾輝は、真っ赤になって道路に転がっていた。






「柾輝!?」






「翼…も…んな大声…」

「しゃベんな!!」

「柾輝、大丈夫!?きゅ、救急車…!!」


大丈夫な、わけがないけど。

何も出来なかった。


「俺がかける!は付いててやって」

「翼先輩」


……っ」

「柾輝?立てる…わけ、ないか。ちょっと待って、血止めなきゃ…」

「…後で、いいから…」

「いいわけな……!?」


唇に、血の匂いと柔らかい感触。


「お前が、好きだ」

「…………!?」

「…わり、口…血で、汚れた…よ」


ただ真っ赤になって首を振る事しか出来なくて。


「俺…たぶ…も…助から…」

「そんな事ない!あたしも車にひかれた事あるけど、元気だもん!」

「大型車じゃ…わけが…ちが…」

「そんな事言わないでよ!柾輝…!」

「泣くなよ…ったく、は……」


そう言って、柾輝は、呆れた笑顔で笑った。






「柾輝ーーーーーーー!!!」



































中3になったばかりのあの日、



世界で一番愛しい人は、星になった。



































波の音が澄んだ、海の前の坂にやってきた。


あれから、早くも5年経つ。

今はもうあたしにも彼氏が居て、十分過ぎる程幸せだ。


だけど、一ヶ月に一回は必ずこの場所に来る。

もう大分古びた、第2ボタンを持って。



「柾輝…」



手に残る、心地よい体温。

唇に残る、震えてもしっかりした感触。

目の裏に残る、呆れたようないつもの笑顔。


あたしが、初めて愛した人だった。


愛していたし、愛されていたけど。


愛し合う事だけが、出来なかったんだ。



柾輝のお墓に花を添えて、手を合わせる。


(あたしは、幸せだから。柾輝も幸せになってね)


気が付くと涙が伝う。

空を見上げると、柾輝が笑ってる気がした。





(変わってないのな、)





そう言って、呆れた笑顔で。












柾輝難しいー…喋り方が分かりません。
どうでもいいけど、柾輝の「へーへー」って言葉が大好き。

何だかまだ心残り。
直樹たちなんて名前だけでかわいそうだ…

飛葉は一人一人が濃いですよね(笑)
そう話を逸らしてみた所で、終わります。


(c)愛渚 雛古 2004.04.02 08.07改