雨の匂いに、いつもなら覚めない目が妙にパチリと開いた。
トットッと屋根の上の方から微かに雨の音も聞こえて、
窓の外を見るとしとしとと水滴が降っている。
そこでボンヤリとした頭が大分機能してき、
そういえば昨日梅雨が始まったとテレビで言っていた事を思い出した。
「、起きてたんだ」
ふとそんな声がして、
そういえばあたしは此処でこの人と暮らしていたんだと、やっとそこまで脳が再生した。
一年間。
どうやら、と上原淳が同棲を初めて、もうそんなに経っているようだ。
「どうした?ボーッとして」
まあいつもの事だけど、と微笑んだ彼に、
違う雨のせいよ、と言い訳して
ベッドの上の淳から延びる膝に優しくダイブした。
「…もう、六月か」
「それがどうしたのよ」
こうしてまったりと、彼に膝枕をしてもらって髪を撫でられる時間が、
は何より好きだった。
「俺らも、もう三年だ」
「そうだっけ?」
クスクスと、わざとらしい笑みを惜しみなく溢しながら
がやんわりと喋る。
こう二人で居ると、強くなってきた雨の音さえ
自分達に対する拍手だというような気分になる。
「ん、」
優しくキスを落とすと、いつものごとく淳は着替えに入る。
はキッチンに立ち、あまり得意ではない料理を
それでも一生懸命にこなすのだ。
「ねえ淳…」
会社に向かうべくスーツを着込んだ淳に、
お皿を食卓に並べながらが呟く。
「中学校の頃のあたしたちからは、想像もつかないね」
どこかしらおかしい日本語だったが、
淳にはちゃんとその意味が読み取れた。
「そうかもね」
焼きたてのベーコンを頬張り、
うまい、もちゃんと忘れずに彼はそう言う。
「喧嘩友達だったのに…」
またクスクスと、もう8年も前になる子供だった自分達に笑いを向ける。
「そうだけど、今は今、だろ?」
「そうね、」
カーテンの外の雨を眺めながら、は囁くように喋った。
いつもと変わらない、けれど。
それがこんなにも幸せだなんて。
ぎゅ…
突然、後ろから抱き締められて、一瞬体が硬直した。
「な…に」
「雨なんか見て、楽しい?」
体温をそのままに分け与えて、軽く頬にキスをする。
「…空が、泣いているから」
六月はきっと悲しい季節なのね、と、
そんな事を言った。
「泣きたい時は一人がいいって言うけど、それはただの強がりだもの」
だからあたしが見ていてあげるの。
そう言うが、ものすごく愛しくて。
「俺が、側にいるから。平気だろ?」
君の全部が、好きだから。
「ん…」
後ろから体制を変えて、もう一度優しいキスを落とす。
「ずっとずっと、が泣かないように」
「………」
淳が何を言おうとしているか分かってしまい、
少しだけ自分の理解力を憎んだ。
「結婚しよう、」
「淳…」
「いや?」
ブンブンと音が出るくらいに首を振り、
嬉しさのあまりに涙が溢れる。
「ねえ淳…」
「ん?」
もしかしたら、空は嬉し涙を流しているのかもしれないね、
そう言ったに、淳は甘く微笑んだ。
「六月は雨の季節だけど、花嫁の季節だから」
しとしと降る雨をバックに…君と、ずっと。

はじめて上原夢書きました…
しかも始めての未来夢。はじめて多。
キャラつかめなくてかなり困りました。
どうなんだコレ…淳?淳?
こんなんでも愛はいっぱい詰まっております。
では(逃)
(c)愛渚 雛古 2005.05.23