「お、お邪魔します」
「どーぞどーぞ」

今日、初めて結人の家に遊びに来た。
結人が彼氏になって1ヶ月。
男の子の家に上がるのなんて、人生で初めてだ…
「あらあら、女の子連れてきちゃって。いらっしゃい」
「お邪魔してます…えと、って言います」
「母ちゃん、何か持ってきてよ。部屋に居るからさ」
「はいはい。結人には勿体無いくらい可愛い子だねー」
「え、あ、…」
「緊張してんだって。ほら、おいで」
「う、うん」
手ー出すんじゃないよ、って、後ろでお母さんが笑ってる。
うるせーって、ちょっと顔赤いよ、結人。
いいお母さんだなあ。結人があんな明るいのも分かる気がする。
結人の部屋は、意外にも綺麗に片付いていた。
なんか、もっとぐちゃぐちゃなイメージだったのに。
小さいソファがあって、そこに座らせてもらった。
「そんなガチガチになんなって」
「だ、だって…」
「もしかしてさ、男の部屋初めてだったりする?」
「うん…」
「まじで!?」
やったー、俺が一番ーって。
そんなに嬉しいもんなのかなぁ…
結人に告白されたのは、桜が散ったくらいの季節だった。
『な、俺さ、の事好きなんだけど。付き合ってみねぇ?』
そんな事はじめてで、どうしていいのかが分からなくて。
ただ、嬉しかった事だけは、隠せなかった。
『う、うん…いい…けど』
『ほんとに!?…やったー!!』
そのまま、地面に倒れこんだ結人。
河川敷の原っぱで、彼氏彼女の関係になったらしい。
…とはいってもね。
はっきりいって、友達とそんなに変わらないんだ。
違うのは、一緒に帰ったりすることくらいで。
手だって、繋いだ事ないんだよ?
あたしからなんて、何にも出来ないけど。
付き合うって、どんな事なのか、いまだに分からなかった。
そんな時、結人が、『俺の家来ねぇ?』って。
いいよって言ったけど…
分からないの。
何もかも始めてな事だらけで。
あたし、どうしたらいい?
「ゆっくりしていってちょうだいね」
そう言って、結人のお母さんが冷たい紅茶を持ってきてくれた。
レモンティーと、それから、アイスキャンディー。
暑くなってきた今日に、ちょうどいい感じだ。
「ありがとうございます」
「いえいえー、礼儀正しいのね」
「、良いって、こんなおばさんに…
ゴンッ
「いってぇーーー!」
「じゃあね、ちゃん」
「は、はい」
パタンッ
「…結人、紅茶もらっていい?」
「え?…あ、うん、いいよ全然」
涙目でひーひー言ってる結人が、可愛い。
そんなに痛かったんだね…
「いい、お母さんだね」
「…まあ、元気だけはいいかも」
「それは、結人もじゃん」
「ひでぇー」
笑顔を見て、緊張が少しほぐれる。
あのね、結人。
あたし、結人の事すごく好きになったよ。
すごく、好きだよ。
「…結人」
「ん?」
レモンティーのストローを咥えて、コッチを見る。
高鳴る心臓。
ねえ、すごい、好き、だよ。
「……アイスキャンディー、食べていい?」
「いいって、の為に出してあるんだし」
何、まだ緊張してんの?って、
目の前で笑う結人。
愛しいって気持ちを、
独占欲を、
今はじめて、覚えた。
「………!?」
「……ふぇー……」
涙が、どうしようもなく零れてきた。
慌てる結人。
ごめんね、困らせて。
「ど、どうした?俺、何かした…!?」
ブンブンと、首を振ることしか出来ない。
「……?」
「ご、ごめ……」
少しひんやりした、気持ちいい体温に包まれた。
気付いたら、結人の腕の中
「ゆ、結人……」
「な、言いたくないんなら、いいけど。…無理すんなよ」
「……うん……」
「俺は、ずっとココに居るからさ」
ねえ結人。
それがね、出来ないの。
あたしは……
「結人…あたしね、引っ越すんだって…」
強く抱かれた腕の力が、緩まった気がした。
「だから……離れちゃ……ふぇ…」
「まじ…で?」
「嘘なんか…つかな…よ」
だから。
「結人ぉ……やだ…やだ…よ」
ね。
こんなにも、好きなのに。
神様は、残酷なんだよ。
不意に、唇が柔らかいもので包まれた。
少し無理やりな、キス。
「…俺、の事離すつもり、ないから」
「だけど…遠いんだも…」
「それでも、離さない」
真っ直ぐな瞳に、吸い込まれそうになった。
「結…」
「好きなんだ、大好きなんだよ、が」
「結人…」
「お願いだから、離れるなよ…」
「結人…」
「愛してるって…そんな言葉じゃ伝えきれないくらい、好きなんだ」
ねえ、結人。
「あたしも…大好き…」
人生で二回目の、甘酸っぱい口づけをした。
手に持ったアイスキャンディーは、溶けて無くなっていた。
「、荷物片付いた?」
「うん、あたしの部屋は完璧だよ」
「じゃあ俺のも手伝ってよー」
「はいはい、あ、そうだ。さっき入れた紅茶…」
「レモンティー?」
「うん、あと、アイスキャンディーね」
「そういえば、こんなような日だったよなー」
「そうそう、ちょっと暑くなった日の…」
「な、」
「何?」
「キスしても、いい?」
「もー…結人、変わったね」
「あの時は、ずっと我慢してたんだよ。えらいだろ?」
「えらくなーい」
「……」
「だって、もっとして欲しかったんだからね」
「……じゃ、今、お返ししてやるよ」
「きゃ…」
何年もの壁を乗り越えて
今日から、新婚生活です。
ねえ、やっぱり
神様は優しいんだよね。
そ ん な 、 初 夏 の 出 来 事 。

はい、考えてたものと全く違うものが出来上がってきました。
最初は、アイスキャンディーの舐めあい(…)だったはずが…
あ、あれ?
読み返すのが怖いです…
最近アンダ組が気になります。
かじゅまかゆうちょか迷ったんですけど…
と、とにかく終わらせてもらいます。
素敵お題に挑戦…アンタほんとに100も書けるんかいな。
ではでは、失礼いたしましたっ!(逃)
(c)愛渚 雛古 05.03.29