にたもの同士だってよく言われる。 君の目と僕の目はこんなにも違うのに?外では、夏の終わりかけを告げる鈴虫が気高く鳴いている。 たまたま、会話の間に出来た沈黙と緊張感。 自分も、きっと結人も気付かないまま、 知らずに本能で、 俺たちはキスをしていた。 『な、俺らって気が合うと思わねぇ?』 結人がそんな風に話しかけてきたのは、選抜練習の3日目。 いつもの様にとっとと寮に帰って、 みんなとゲームでもしようかと思っていた夕方だった。 『え?』 靴紐を結んでいた俺が顔をあげると、 めずらしく一人で立っている茶髪の子。 『若菜?だっけ』 『ひでぇ、まだ名前もしっかり覚えてくれてねーの?』 ごめん、知ってたんだけど、名前覚えるの苦手でさ、なんて言い訳すると、 結人でいいよ、そう言ってニッと笑顔が返ってきた。 『いつも郭や真田といただろ』 靴ひもがしっかりと結ばったところで、 立ち上がってみると思ったよりも背が低かった。 『ふーん、英士と一馬の名前は覚えてんだ…?』 不機嫌そうな声に慌てて、 悪かったよ結人、と名前で呼ぶと、 またニッと笑った。 『どういたしまして』 コロコロと変わっていく表情に、 自分でいうのも変だけど、本当に俺と似ている気が不思議とした。 どうして結人が俺に声をかけてくれたのか、もきっとその理由で。 『あ、キャプテン。今日先帰ってもらっていいっすかね?』 気付けば、二人で遊んで帰る気満々だった。 話してみると、それこそ怖いくらいに、 俺らの気が合わさっていった。 ゲーム、漫画、学校の授業に、もちろんサッカーだって。 めだって違うことっていったら、 俺はニンジンが嫌いで(あんなん食べ物じゃないだろ!?食えるやつの気がしれねー、と俺は言った) 結人はトマトが嫌いで(ニンジンなんてどーってことねーよ!あのグチョッてした食感、あれこそ不食物!!と結人が言った) それでは、ずいぶん下らない言い合いをしたけど、 『特定の野菜が嫌い』の一言でまとめてしまえばそれだって似てるでしょ。(これは郭が言ったんだ) それで、いつの間にか練習の帰り道は結人の家、が、 決まりごとのようになっていったんだ。 「郭と真田と本当に仲いいよなー」 「そりゃ、な」 いつものように「お邪魔します」、 いつものように「ジュース取ってくるから待ってて」、 いつものように「ゲームやるか」 その流れをふと止めて、俺はそう言った。 「誠二だって、渋沢とか三上とか笠井とか…仲いいじゃん」 「そりゃ、な」 ポッキーを持て遊びながら、結人はそう言った。 同じ答えを俺は返す。 少し嫉妬、かもしれなかった。 キャプテンも三上先輩もタクも、もちろん仲はいいし、(とか三上先輩に言ったらキックが飛んできそうだけど) みんな、もちろんそれは大好きで。 だけど、それとはちょっとだけ、違った気がしたんだよ。 俺は結人に対してこう、 ひとつになってしまいたいような。 深く広く遠く、空のように果てしがない、 言ってしまえば、恋人のように、 そういう違った意味で、好きになっていったんだ。 こんなことを思う俺を、君は嫌うだろうか? 「だけどさ…なんつーの?」 「え?」 結人も考えこんでいたのか、しばらく沈黙が走った空間を、 聞きなれた声がやぶってしまった。 「誠二はちょっと、違う気がする」 「…え?」 うーん、と考え込むように、結人は無い頭を(こんなことを言ったら、またキックが飛んできそうだけど) 必死で動かしながらしゃべっていた。 「なんていうか…空みてーな」 「………え?」 「うん、英士と一馬とはちょっと違う。違う意味で、大切な、」 「結人、」 外では、夏の終わりかけを告げる鈴虫が気高く鳴いている。 たまたま、会話の間に出来た沈黙と緊張感。 自分も、きっと結人も気付かないまま、 知らずに本能で、 俺たちはキスをしていた。 「…結人、すき」 「俺も…」 もう一度、たしかめあうように 唇を探りあった。 空のように、どこまでいくか分からない予感のする、 こんな君と秘密の恋。 空のように、果てなく。
藤笠をさきに書くつもりだったのに、 結人がうるさいので(…)藤若をさきにしました。 タクごめんよ、明日は誠二とラブラブしてね。 とりあえず逃げます。 (c)愛渚 雛菜 2005.09.06